近年「サスティナブルファッション」という言葉を耳にする機会があります。
何となく「地球に優しい」というイメージが湧きますが、詳細な意味はあまりよく分からない方も多いのではないでしょうか。
今回はサスティナブルファッションについて解説します。
サスティナブルファッションとは
「サスティナブル」とは?
英語で「sustainable」は「維持できる」という意味の形容詞です。
近年よく耳にする「サスティナブル」は何を維持できるか?というと、現在の地球や自然の環境を指します。
温室効果ガス排出量増加、水・大気・土壌の汚染、資源の無計画な消費など、人類が豊かな生活を送るために犠牲にしてきたものがいくつもあります。
「将来の世代も現代と同じような環境を維持できる」という意味でサスティナブルという単語が使われます。
「SDGs(Sustainable Development Goals)」=「持続可能な開発目標」でもサスティナブルという単語が使われているため、近年は日常で使用する機会が多くあります。
「サスティナブルファッション」とは?
ファッション産業は環境負荷が非常に大きい産業で、国際的な課題となっています。
原因は大きく分けて2つあります。
- 製造に多くのエネルギーを使用する
- ライフサイクルが短い
そこで、ファッションの生産・着用・廃棄を環境問題に配慮したサスティナブルなサイクルへ転換しようという取り組みが近年急速に広まっています。
各ブランドの理念をチェックしよう
サスティナブルファッションの取り組みは多岐にわたります。
- 原料にリサイクル素材を使用する
- 原料に土壌汚染をしない染料を使用する
- 人権に配慮した生産工場
- 廃棄を減らすリサイクルプログラム
- 売上の一部を寄付 など
各ブランドの理念はそれぞれ違います。
ファッションのデザインだけでなく、理念や取り組みの内容に共感して商品を購入するファンもいます。
私たち一人一人がサスティナブルファッションについて考え、一緒に取り組んでいける理念を選ぶことが大切ではないでしょうか。
海外のサスティナブルなファッションブランド
世界ではサスティナブルな理解が普及し、世界にサスティナブルファッションが急速に拡大しています。
強い理念を持つ海外のサスティナブルファッションのブランドをご紹介します。
Everlane(エバーレーン)【ファッション】
アメリカ サンフランシスコ発のブランドで、2011年に誕生して以来、透明性を重視したブランドとして進化し続けています。
We believe we can all make a difference.
Our way: Exceptional quality.Ethical factories. Radical Transparency.
Everlane公式サイト「about」より
「並外れた品質」は、長持ちする品質で廃棄を減らすことを目指しています。
「倫理的な工場」は、原材料から製造工場まで服が生まれた道のりを公開し、適正な賃金や労働時間である環境の製造工場を自信をもってユーザーに見せています。
「根本的な透明性」は、ファッション産業ではブラックボックスにされがちな材料費や輸送費、人件費などを公開している透明性のあるブランドです。
SHOWFIELDS(ショーフィールズ)【ファッション】
アメリカ ニューヨーク発の「世界一面白いお店」を自称している新時代のデパートです。
数か月単位で新興D2Cブランドにスペースを貸し出しを実施し、それぞれの世界観を体験できる体験型ショールーミングストアの先駆けで「売らないお店」と呼ばれています。
欲しい商品はその場でQRコードを読み込み、自身でオンラインサイトで購入する流れになります。
実店舗を持たない店舗が近年増えていますが、実物を見てみたいという消費者の感情をなくすことはできません。それを補うのがショーフィールズです。
各ブランドは店舗を構える必要がなく、ショーフィールズの低価格パッケージで実物を見ることのできる環境を作ることができ、各ブランドが不要なコストを徹底的に排除できるのがショーフィールズです。
Reformation(リフォーメーション)【ファッション】
Our mission
Reformation’s mission is to bring sustainable fashion to everyone.
Reformation公式サイト「Sustainability」より
リフォーメーションの使命は「すべての人にサスティナブルファッションをもたらすことです」
商品の「Sustainability impact」という項目で水や二酸化炭素の節約量など具体的な数値を見ることができます。
この数値には製造にかかるコストのみならず、輸送や購入後の洗濯の回数など細かな部分まで全て計算された数値になっています。
Glossier(グロッシアー)【コスメ】
アメリカ ニューヨーク発のGlossierは顧客に寄り添うコスメブランドです。
個人差のある肌の色や顔の造形もその人に合わせた美しさを引き出せるよう、「メールで自分の写真を送ると色合い選択を手伝いますよ!」との嬉しい記述があります。
各商品ページにはコメントが解放されていて、良い意見ではなく悪い意見も分け隔てなく顧客の意見を受け入れています。
その結果、Instagramのフォロワー数は268.4万人と多くの顧客に愛されています。
パッケージの簡易化や動物実験を行わない、自然成分の使用などサスティナブルな方針もしっかりあります。
CAMP(キャンプ)【トイショップ】
大人もわくわくするトイショップのCAMPの店舗内には「マジックドア」と呼ばれる秘密の隠し扉があり、その先には体験スペースが広がっていて、テーマパークに訪れたような楽しい空間が待っています。
商品は「子供には自分を育てる力がある」という自己教育力を柱としたモンテッソーリ教育を取り入れた温かみのあるおもちゃも多く見られます。
靴コーナーにはリサイクルボックスが設置されていて、古い靴を持っていくと10%オフで購入可能になります。回収された古い靴はフロア素材にリサイクルされます。
親子でリサイクルについて話し合うことができるきっかけになることでしょう。
Cuyana(クヤナ)【ファッション】
Cuyanaのコンセプトは「fewer, better(より少なく、より良く)」です。
日々の使用に耐えられるよう耐久性が高い商品でありながら、飽きの来ない美しいデザインが特徴です。
厳選された材料は、熟練の職人によって最高品質なものが作成されていますが、不当な労働環境とならないよう、現地の労働基準法と独自の労働基準を満たした工場が採用されています。
Warby Parker(ワービーパーカー)【アイウェア】
2010年にニューヨークで創業したWarby ParkerはD2Cメインのアイウェアブランドです。
試着したい5点を選ぶと、5日間試着できます。
「どのメガネが似合うかな?」とSNSに投稿する人も多く、元のデザイン性の高さと合わせて若い世代に人気です。
Warby Parkerでは「Buy a Pair, Give a Pair」というプログラムを設けています。これは1つ商品が売れると途上国のメガネを必要としている人に1つメガネを寄付をするというものです。
Amour Vert(アモーレ ベート)【ファッション】
Amour Vertは「We are green love.」との理念のもと、環境に配慮したファッションを提供するブランドです。
羊を傷つけないミュールジングされていないウールやコットンシードから生まれるキュプラなど、原料からこだわりがあります。
「Tees for Trees」ではTシャツが売れるたびに植樹するプログラムも行っており、これまでに353,990本もの木が植えられています。
ここまで環境に配慮された商品であるにもかかわらず、Amour Vertは「これ以上値上げするつもりはない」と断言しています。
手に取りやすい価格、高いデザイン性で、これまでのエシカルファッションの概念を覆すブランドです。
Patagonia(パタゴニア)【アウトドアウェア】
Patagoniaは2019年に国連で最高の環境賞である「地球大賞」を受賞した、世界のサスティナブルを牽引するブランドです。
サスティナブル、SDGsという単語を耳にするようになった近年よりずっと前の15年ほど前からリサイクル素材やオーガニックコットンの使用、環境レポートの公開などを行ってきました。
Patagoniaには製品保証があり、問題点があれば交換または修理を受け付けています。品質に自信があるからこそできることですね。
日本国内でもアウトレットを含め22店舗あり、入手しやすいブランドです。※2022年2月現在
Allbirds(オールバーズ)【シューズ】
Allbirdsの創始者ティム・ブラウンは再生可能エネルギーの専門家であるジョーイ・ツウィリンジャーとチームを組み、靴用の特別なウール素材を開発しました。
素材だけでなくリサイクル素材の包装や、SOLES4SOULS®という靴の寄付団体を支援するなどサスティナブルに積極的です。
「より良いものを、より良い方法で」という理念のもと、デザイン性に優れた履きやすい靴を販売しています。
驚くべきはAllbirdsのスニーカーは洗濯機で丸洗いができます!
公式サイトで洗濯機での洗い方を解説しています。
https://allbirds.jp/pages/clean-your-allbirds
MALIBU SHIRTS(マリブシャツ)【サーフTシャツ】
MALIBU SHIRTSはヴィンテージ風のサーフTシャツで有名な「海のブランド」です。
海洋ごみからリサイクルされたポリエステル原料から糸や生地へアップサイクルしている素材を「ONE OCEAN」と名づけました。
リサイクル素材とは思えない肌触りの良さも人気です。
海を愛しているからこそ環境に配慮し、「世界中の海からごみが無くなれば、MALIBU SHIRTSもなくなる」そんな世界を目指しています。
Boody(ブーディ)【インナー】
2012年にオーストラリアのシドニーで誕生したBoodyは見た目も着心地も良いインナーブランドです。
デザインはシンプルでベーシック。オーガニックな竹を使用したバンブーウェアは柔らかく、毎日身に着けるものだからこそ心地よく体にフィットします。
バンブーウェアは湿気を逃して防臭効果が高く、低刺激で通気性も抜群。着ていることを忘れてしまうほどの着心地の良さです。
竹は森林より30%多くの酸素を生み出し、地球で最も成長スピードが速い植物としてギネス記録を持っていて、環境にやさしい持続可能な素材です。
「人にも地球にも優しく」が理念のBoodyは公式サイトトップページで「Boodyが生み出すいい影響」として排気ガスの削減量、水や電気の節約量などを公表しています。
日本のサスティナブルなファッションブランド
日本でもサスティナブルファッションは広がりを見せています。
日本人らしい「もったいない」から生まれる廃棄の減少を目指すブランドが多くあります。
PeopleTree(ピープルツリー)
PeopleTreeは1991年に東京で設立されたフェアトレードアパレル企業です。現在は東京とロンドンの両方に拠点があります。
オーガニックコットンを生産する農家や産地のコミュニティ発展のため、労働環境などの基準を厳しく設けています。
働く農家自身の生活はもちろんのこと、それを取り巻く環境全体にメリットをもたらすことで、社会的問題の根本的な解決を目指しています。
PeopleTreeはレディースファッションや雑貨などを取り扱っていますが、チョコレートも人気商品です。
かわいらしいパッケージ、日本人の好みで言えば少し甘めのチョコレートもフェアトレードで生産されており、SPA2017国際部門で大賞を受賞しています。
oblekt(オブレクト)
oblektは名古屋に本拠地を持つ豊島株式会社が立ち上げたブランドです。
スウェーデン語で何にも染まっていない「生成り」という意味を持つoblektは、クリーンで知的で簡潔。多様化するライフスタイルに寄り添う柔軟性とシンプルな中に美意識を感じさせるデザインです。
「人と環境に優しいモノづくり」をコンセプトに作られた商品は長く愛用できるデザインです。
天保12年から創業180年になる豊島株式会社だからこそできるオーガニックコットンや再生ポリエステル素材のシャツは大人のゆとりをさらに引き立てます。
NAGIE(凪へ)
NAGIEは三菱商事グループの企業が立ち上げた次世代型サスティナブルD2Cプロジェクトです。
Be yourself.For the earth.
人や、地球環境や、社会を循環させるブランドを目指しています。
NAGIEの商品は限定受注生産となっており、オンラインサイトで注文してから発送まで4~6週間程度かかります。
日本国内のアパレル供給数はここ20年ほどで需要数を逆転し、供給過多になっています。不要な生産を行わないためNAGIEでは限定受注生産となっています。
NAGIEの商品はビジネスとアスレチックをスムーズにつなぐ「ビスレチック」。あらゆるシーンで身に着けることができます。
MERCI(メルシー)
MERCIは日本国内で生産された生地を使用し、佐賀県にある縫製工場で製造しているオールジャパン製のブランドです。
これまでのアパレル業界の常識を覆し、人と環境にやさしい選択を行っています。
MERCIでは9R(ナインアール)をコンセプトにしています。
- Reduce(服を無駄につくらない)
- Reuse(価値ある服は再利用する)
- Recycle(資源に戻し再利用する)
- Refined(洗礼された、磨かれた素材を活用する)
- Real(リアルをユーザーへ伝える)
- Rational(合理的な判断で在庫ロスを減らす)
- Reset(今までの常識をリセットする)
- Radical(先鋭的な思考で社会問題へ挑戦する)
- React(また行動する)
9Rのコンセプトを基に作られた商品は、より長く快適に着用することができる「自分のための服」となっています。
Annaut(アンノウト)
日鉄物産株式会社の繊維事業と三井物産アイ・ファッション株式会社が事業統合してできたMNインターファッション株式会社のブランドです。デニム生地でできた商品を製造しています。
デニムの製造で必ずできてしまう裁断くずを再利用した糸で作られたデニム生地で作られています。このデニム生地もあえて染色を行わず、出来上がったままで使用しています。柔らかい風合いになると同時に染色に必要な水も削減できます。
さらに服を循環させる「CLOTHLOOP」に取り組んでいます。
衣料品を回収、仕分け、半毛、紡績という工程を経て生地へリサイクル。衣料品もペットボトルと同じようにリサイクルされ、循環するものになるために尽力しています。
Enter the E(エンタージイー)
Enter the Eは人や環境に配慮した服だけを世界中から集めたセレクトショップです。
在庫を持たず、廃棄率0、消化率100%で必要な分だけ必要な人に届ける「スローファッション」に取り組んでいます。
取り扱うブランドも6つのサスティナブル基準が設けられています。
- 持続可能な材料
- 情報の透明性
- 創設者、デザイナーのビジョン
- デザイン
- 作り手へのリスペクト
- エネルギー・CO2・資源の使用削減に対する努力
全ての項目を100%クリアできなくても、クリアする努力が見えるかどうかが重要で、本当に環境や雇用に対して誠実に向き合っているブランドのみを取り扱っています。