複数店舗を経営している経営者や統括マネージャーに贈る店舗分析術
複数の店舗を運営するにあたり、各店舗ごとの運営を分析することは当たり前です。条件が異なれば、課題や売り上げ目標などが異なってくるので、何も考えずに同じ施策を導入したところで、その効果は期待できません。しかし、複数店舗を運営していることのメリットは、店舗ごとの対比による改善点の洗い出しが可能であるというところです。条件とデータをすべて自分の手元に置いたうえで、具体的な分析と店舗間比較から、店舗を一つしか任されていなかった時より見えてくるものがあるかもしれません。
店舗の分析の方法は、さまざまな切り口で行うことが効果的です。よって、データが多ければ多いほど網羅性が高まり、より正確で、正解に近い課題解決策が見つかる可能性が期待できます。
一般的に、分析は一つの店舗を中心に競合店舗との比較や立地に関連する人の動きなどで考えてしまいがちですが、もっとも費用対効果の高い分析は、自社の店舗内での比較分析なのです。なぜなら、あらゆる情報が取得できている自社の店舗内での比較分析は、細かいポイントまで確認できるからです。
それでは、店舗分析について具体的に解説します。
同じ客層の店舗間で比較する
チェーン店の中で、客層が同じ店舗同士を比較してみましょう。
例えば、タピオカ店で都心の店舗Aとやや郊外の店舗Bがあったとし、客層はどちらも10代〜20代女性だとします。そして店舗の客層について分析したい、という目的があったとします。
まず最初に、店舗AとBの購買率や購入単価を時間帯ごとに分析をします。すると、都心の店舗AとBでは曜日に大きな違いがあることや、時間帯ごとにみるとターゲットとしていた客層とは異なる層がより来店していたという事実があるかもしれません。
そうすると、それぞれの店舗における販売強化すべき曜日が明確になり、その曜日に合わせてシフトを組んだり、呼び込みに力を入れたり、トッピングキャンペーンを打つなどの施策を打つことができます。また、店舗間で同じ商品や単価でも売り上げが異なる場合、この客層の違いに注目することで新たな原因を分析することができるかもしれません。
その他の分析の着眼点としては、売れ筋商品は同じでも、来店時間や曜日の違いと客層の関連性や、店舗の立地や環境の要素が店舗の客層にどのような影響を与えているかなどがあります。
様々な仮説を立てるために、可能な限りのデータを取得し、複数のデータを組み合わせて、比較分析を進めていきましょう。
同じくらいの売上額の店舗間で比較する
同程度の売り上げを出している店舗があれば、比較分析をしてみましょう。
売り上げの規模は同じでも内訳が大きく異なるケースはよくあります。来店者数、客層、客単価、来店手段など、いくつかの項目でどのような特徴があるのか、正確に把握しましょう。
郊外の店舗と都心の店舗で売り上げの規模が同程度である場合、店舗の特徴によりますが、どちらかの店舗が思うように運営できていないケースが考えられます。なぜなら都心と郊外では、客層や来店数が異なり、自然と都会の店舗の方が集客に適していると考えると、郊外と都会で売り上げが同じである原因は必ずあるはずです。例えば郊外の店舗は来客数は少ないが平均客単価が高いから、集客よりも、リピーターの育成を強化させるような販売戦略を行っている、といった理由が考えられます。しかし、その原因は分析してみなければわからないので、やはり様々なデータを集めて店舗の条件や特徴を踏まえたうえで比較分析する必要があります。
同じ売場面積の店舗で比較する
同じ規模の売場で売り上げの差が著しい店舗がないか、分析しましょう。
立地の違いは考慮するべきですが、同規模の売場で売り上げが違う場合、売場のレイアウト、売場の雰囲気、スタッフの数や配置、客層、時間帯など、いくつかの要因で差が出る可能性があります。
売り上げの少ない店舗は、同じ規模でより売り上げの多い店舗と比較して、何が違うのか、何が要因で売り上げに差が生まれているのかを検討することで店舗の課題や改善点を探し当てることができます。
よくしてしまいがちなのは、スタッフ個人の接客スキルの違いに注目してしまうことですが、 売場の配置やPOPの質は販売数にとても大きな影響を与えます。売場は必要なものが見やすく、わかりやすい配置になっているか、POPは必要な情報がひと目でわかるような工夫が凝らされているかによって効果は異なってきます。
日頃から売り場の状況をしっかりと把握しておきましょう。
まとめ
いくつかの店舗を展開するチェーン運営では、各店舗のデータを取得、整理し、店舗間で比較分析できるというメリットがあります。
同じ売り上げ、店舗規模、客層など比較する材料はさまざまあり、店舗運営のポイントは何気ないところに隠されています。また、日頃から店舗の巡回を入念に行うことで新しい課題を発見することもでるでしょう。
店舗の比較分析には項目が多くありますが、適切な項目は業態や地域などさまざまな要素によって異なります。どの要素で比較分析するのがベストなのかは、店舗を日頃から把握しておかなければ判断ができません。
加えて自分が持つ店舗同士の比較だけではなく、競合他社と自店舗との比較も総合的な分析にとって新しい発見や、施策計画の根拠の補強となるので、取り組むべきです。広い視野で、各店舗バランスのよい判断を下すように心がけましょう。