帝国データバンクは、価格転嫁に関する企業の見解を調査し、結果を公開しました。
背景
- 2022年から原油・原材料価格の高止まりが続いている
- 為替相場の動向なども合わせ、2023年も引き続き影響を及ぼしている
- 政府は物価高騰に対応する各種施策を打ち出している
- 公正取引委員会は主体的に取引価格の引き上げ交渉を行っていなかった企業を公表するなど、価格転嫁の促進を図っている
価格転嫁の状況と価格転嫁率
コストの上昇分に対して「多少なりとも価格転嫁できている」企業は69.2%となりました。一方で「全く価格転嫁できていない」企業は15.9%となりました。
「価格転嫁率」は39.9%と4割を下回りました。これはコストが100円上昇した時に39.9円しか販売価格に反映できていないということになります。
調査方法が異なりますが昨年9月時点と比較すると、緩やかに価格転嫁が進んでいるようです。
価格転嫁率~主な業種別~
- 「価格転嫁はほぼできている」(鉄鋼卸売)
- 「今や物価高が当たり前のような状況になっているので、価格転嫁についても取引先からの了解は得やすくなっている」(電気機械器具卸売)
「卸売」では比較的多くの企業で価格転嫁を行えている一方、「医療・福祉・保健衛生」(10.5%)、「娯楽サービス」(12.7%)といった低水準となっている業界も目立つ結果となりました。
- 「公的単価設定は、経費がかさむだけで喫緊の物価変動には対応できない。」(一般病院)
- 「物流業界は競合他社との兼ね合いが強いため、自社だけで交渉することは難しい。受注の減少も懸念される」(一般貨物自動車運送)
このような厳しい声が多数ありました。また、同時に付加価値向上も講じるという解決策の意見も見られました。
価格転嫁以外の対応策(複数回答)
半数を超える58.6%の企業で「自社経費の削減」を実行しており、自助努力によって対応しているようでした。
価格転嫁できない、難しい理由(複数回答)
価格転嫁できない理由は、取引企業や消費者からの理解の得られにくさを指摘する企業が多いという結果になりました。
また、取引企業との交渉そのものができていない企業も一部でみられました。
まとめ
コスト上昇に対して、多少なりとも価格転嫁ができている企業は約7割となり、モノの価格が上昇していることに対する認知や理解が、少しずつ進んでいることを示す結果となったのではないでしょうか。
しかし認知や理解が進んでいても、価格が高まってしまうと取引企業や消費者から選択されなくなるのではないかと企業では不安を抱えているようです。そのため、経費やムダの削減といった自社内の企業努力もみられます。
物価高騰が叫ばれるなか、地政学的リスクや為替動向など依然として出口が見えない環境下にあり、企業がコスト上昇分を負担する状況も限界に近づいています。
しかし、次のような解決策を講じている企業もみられます。
- 「根拠のない値上げと思われないように、値上げの中身・要因・比率を正確に説明するよう努めている」(雑穀・豆類卸)
- 「クライアントから選ばれる存在であるために、必要な分だけの価格転嫁を行いプラスアルファの付加価値を心掛けている」(ソフト受託開発)
競合他社との差別化を行える現状を好機と捉え、将来を見据えた取り組みが必要となるのではないでしょうか。
出典元:PR TIMES