コロナ禍で経済状況は一変しました。時短要請や消費支出の減少などの影響で打撃を受けた店舗も多くあります。
小売業界の現在を統計から読み解き、経営改善のための情報をまとめました。
コロナ禍の小売業界
小売業界の経済状況
経済産業省が「経済解析室ニュース」として統計からの分析レポートを発信しています。
その中で「2020年小売業販売を振り返る」というレポートがあります。https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/archive/kako/20210409_2.html
この報告から、業界ごとにどういった原因でどのような影響が売上に出たか、次のようなことがわかります。
売上 | 業界 | 理由 |
減少 | 百貨店 コンビニエンスストア 織物・衣服・身の回り品小売業 自動車小売業 | 外出自粛観光客(インバウンド含む)の減少 テレワークなどによる通勤客の減少 時短営業要請 |
増加 | スーパー ドラッグストア 家電大型専門店 ホームセンター | 衛生用品の売上増加 食品の売上増加 巣ごもり需要 |
例えば、ドラッグストアは都市型の化粧品を中心とした店舗では売上を伸ばせず、反対に郊外型の食品を中心とした店舗で売上を伸ばしています。
スーパーは巣ごもり需要の影響で大きく売上を伸ばした印象がありますが、実際は出費を抑えた家庭も多く、微増程度に収まっています。
小売業界全体を見ると家庭の影響は大きく、多くの業界で売上を減少させています。
コロナによる消費行動の変化
各業界の経済事情が変化した大きな理由は、消費行動がコロナによって大きく変化したからです。その中身について下のグラフを参考に、詳しく見ていきましょう。
家計はどう変化したか読み解いていきましょう。
全体としてはコロナ禍以前の2019年より支出が減少しています。
また支出の中身をカテゴリー別にみると、次のようにまとめられます。
増加 | ほぼ変動なし | 減少 |
食費 家具・家事用品 | 住居 光熱・水道 保健医療 通信 | 外食 被服及び履物 交通・自動車 教育 教養娯楽 交際費 その他消費支出 |
増加したのは食費と家具・家事用品。自粛要請の影響で巣ごもり需要が増加したと見られます。家庭での食事回数の増加、楽しみを食事や家具などに求めた人が多かったようです。
光熱・水道は季節の変化はあれど、保健医療などと同様に変化の少ない支出で、コロナ禍の影響はなかったと言えます。
テレワークの影響で通信の支出が伸びるかと思われましたが、Wi-Fiなど固定額での通信のため、こちらもほぼ変動はありませんでした。
対象的に、減少したのは外食、被服及び履物など顧客が外に出て支出するものでした。不要不急の外出にあたると想像されるショッピングや娯楽、それに付随する交通機関での移動や外食が軒並み減少しています。
また、外出機会の減少により被服や履物、化粧品などを必要としない人も増えました。他に、習い事の休講以外にも、コロナ禍の影響により倒産や収入減となったため教育費を抑えるといった動きもあるようです。これは教育費に限った話ではなく、節約の意識から全体の支出が減っているのかもしれません。
全体の傾向として、消費者のお金の使用用途がコロナ禍以前と比べて変化していることが分かります。
実店舗を手助けするお役立ち情報
補助金制度
雇用調整助成金(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
事業者が従業員の休業を行う場合、休業手当などの一部を国が助成するものです。
「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例」として、日数上限の撤廃や助成金額の拡充、アルバイトなど非正規雇用の場合でも対象に含まれるなど、事業者を強力にバックアップします。
対象期間は令和2年4月1日から令和3年11月30日までを1日でも含む賃金締め切り期間を対象とした特例措置となっています。
小規模事業者持続化補助金(商工会議所・商工会)
小規模事業者の販路拡大のための取り組みを支援する補助金です。
「コロナ特別対応型」では補助上限額が50万円から100万円に引き上げ、移動車両販売が対象になるなどの変更があります。
補助を受けるためには販路拡大のための事業計画を作成し、採択されれば補助金が支給されるもので、必ず補助金を受けられるわけではありません。
実際に支給を行うのは中小企業庁になりますが、商工会議所・商工会のサポートを受けつつ事業計画を作成するため、最初の窓口は商工会議所・商工会になります。
所在地によって管轄が商工会議所か商工会かが変わります。
商工会議所・・・主に市の区域
商工会・・・主に町村の区域
新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html
コロナ禍の影響により一時的に業績が悪化しているが中長期的には業績回復できる中小企業への支援として行われる貸付です。
「国民生活事業」と「中小企業事業」と分かれています。
国民生活事業・・・個人事業主や小規模企業
中小企業事業・・・国民生活事業より大きい規模の中小企業
貸付になりますので、返済の義務があります。
中小企業基盤整備機構(中小機構)が「特別利子補給制度」を行っています。条件を満たすことが出来れば当初3年間実質無利子化が可能になります。
データドリブンな店舗経営をする方法
コロナ禍で売上が伸び悩んでいる店舗にとって、コストを抑えた効率的な店舗経営は理想です。その形として、店舗で収集したデータをもとに、店舗の改善点や課題を洗い出し、ピンポイントで解決策を考案する、データドリブンな店舗経営が有効的です。
入店数獲得
データに基づく店舗経営の第一ステップとしてまずやるべきことは、来店人数の取得です。正確な来店人数を把握することで、収集したデータから売上改善のために店舗の取れる戦略をいくつも考察することができます。
例えば、混雑時の適切な人員配置や、時間帯別の販促強化戦略など、データを元に様々な分析ができます。詳しくは、同メディア内の次の記事をご参考にしてください。
レジ待ち行列監視
レジ待ち行列監視とは、天井に設置したカメラでレジ前の行列を感知して店員にチャイムで知らせるサービスです。リアルタイムに店内の行列状況を可視化し、監視による通知やログにより店舗業務の効率化に繋がります。またソーシャルディスタンスの確保、レジでの待ち時間が少なくなることで、顧客満足度の向上につながります。
データドリブンな店舗経営をするためには、お店のあらゆるデータが必要です。レジ待ち行列監視のシステムを導入することで、営業中にレジ前でどのくらい人が並んだのか、並ぶ頻度がどれくらいあったのか、列を解消するためにどのくらい時間がかかったのか、レジ待ちが発生した原因が何かなどの情報を入手することができます。これらのデータをもとに適切な人員配置、作業の効率化、店舗の抱える課題の洗い出しなどをすることができます。「3密」回避が要求され、店舗側の人数も削減しなければならないため、少人数での効率的な店舗経営が求められます。
また、レジ前の行列監視のデータを取ることで、データドリブンで効率的な店舗経営ができると同時に、コロナ禍で混雑な場所にいたくないという顧客心理を解消することもできます。
まとめ
コロナ禍では消費者の支出が抑えられ、多くの業種で打撃を受けています。
国などが多くの支援策を行っていますので活用しつつ、データドリブンな店舗経営を目指し、コロナ禍の厳しい情勢を乗り切っていきましょう。
当オウンドメディアは、小売店舗がデータに基づいた効率的な経営ができるための方法、考え方、コツを詰め込んだコンテンツも配信しています。
データドリブンな店舗を経営する方法を解説している記事も一緒にご覧ください。
また、売り上げが伸び悩んでいるオフラインの実店舗をデジタル化の力で変革させるためのコツを「店舗DX 虎の巻」でまとめました。店舗のDX化をステップごとに解説している記事を集めた内容となっています。