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需要予測システムとは?|概要・手法・メリット・デメリット、事例などおすすめ7選

需要予測システムとは?|概要・手法・メリット・デメリット、事例などおすすめ7選

企業がビジネスを行う上で大なり小なり需要予測を行います。しかし需要予測を個人が常に手動で行うことは非常に難しいため、需要予測システムを利用している企業があります。
今回は需要予測システムの解説を行います。

※この記事は2023年3月1日に作成された内容です。

需要予測システムとは

需要予測システムとはどのようなものなのでしょうか?

概要

  • 需要:求めること。ビジネスにおいては商品に対して購買する意欲があること
  • 予測:将来の出来事を何かの根拠から推し量ること

つまり、需要予測とは自社の商品(サービス)がどのくらい売れるのか推測することです。商品をどのくらい入荷するか、自社商品をどのくらい生産するかは需要予測に基づいた数を用意することで、無駄な在庫が発生しにくくします。

どんなに小さな会社でも、過去の経験に基づいた感覚や勘であっても需要予測は行っているものです。需要予測で効果的な商品の入荷や資金計画をたててビジネスを行っています。
しかし、需要予測はあくまでも予測です。予測と結果が完全に一致することはなく、需要予測の判断ミスは在庫過剰やビジネス機会の損失につながります。

そのため、需要予測は精度が高いほど良い、ということになります。
需要予測の精度を上げるためには、感覚や勘に頼らず、過去の実績や様々なデータを元に行うことが必要です。

5つの手法

実際に需要予測を行う手法を見てみましょう。

算術平均法

算術平均法は複数の数値から平均を割り出し、予測値を算出する方法です。Excelでは「AVERAGE関数」で計算することができます。
需要予測の中では最も単純な計算となるため、仕組みが分かりやすいことが特徴です。

算術計算法の例
算術計算法の例

移動平均法

移動平均法は期間を移動させながらその期間の平均を割り出して、予測値を算出する方法です。期間を区切って算術平均法を行う、という形になります。

直近の一部の期間から予測値を算出するため、経営期間が長いなどデータが膨大な場合でも一部期間のみで算出することができます。

移動平均法の例(直近3か月で計算)
移動平均法の例(直近3か月で計算)

指数平滑法

指数平滑法は過去の予測値と実績値から次の予測値を計算する方法です。次の計算式で計算することができます。

予測値=平滑係数×前期の実績値+(1-平滑係数)×前期の予測値

平滑係数は0から1の間で自由に数値を決定しますが、0に近いほど過去の経過を重視し、1に近いほど直近値を重視することになります。過去のデータでシミュレーションし、予測誤差が小さくなるよう設定する必要があります。

指数平滑法の例(平滑係数=0.3で計算)
指数平滑法の例(平滑係数=0.3で計算)

回帰分析

回帰分析とは、因果関係がある数値の関係を算出し、どれだけ影響を与えるか予測する方法です。
広告費が売上にどれだけ影響するのか、というような予測を行いたいときに利用します。

Excelにはアドインに分析ツールがあるので、導入して回帰分析を行うことが可能です。

Excelで回帰分析を行う設定

ホーム→オプション→アドイン→アドインの「設定」を選びます。

Excelで回帰分析を行う設定
Excelで回帰分析を行う設定

「データ」タブの右端に「データ分析」が追加されれば準備完了です。

回帰分析の例
回帰分析 数値
回帰分析 結果

加重移動平均法

加重移動平均法は移動平均法の一種です。
移動平均法の例では3か月の平均を算出しましたが、加重移動平均法では直近1か月を重視し、次のように計算します。

4月予測値=(1月+2月+3月×2)÷4

重視したいデータほど余計に加えて平均を出す、という計算法なので、何を重視するかによって加重係数を大きくしたりすることも可能です。

加重移動平均法の例(3か月で計算)
加重移動平均法の例(3か月で計算)

メリット・デメリット

需要予測システムを導入するとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?メリットのみならずデメリットをきちんと把握しましょう。

メリット

業務効率化

手作業で需要予測を行うことは非常に難しいです。上記で様々な計算方法をご紹介しましたが、実際には複数のあらゆる要素を予測の要素に組み込むのは難易度が高いです。

勘や経験のみで需要予測をすることは信頼性の欠ける方法ですが、気候や行事など不特定な要素を需要予測に組み込んでいることもあります。
このような担当者が上手く言語化できていない要素でも、需要予測システムなら予測を任せることができ、業務を効率化することができます。

在庫量の最適化

在庫量は、多すぎても少なすぎても利益を最大化することができません。
需要予測システムは無駄なコストの削減、ビジネス機会の損失回避といった在庫量の最適化につながります。

近年AIによる需要予測が普及しており、過去の売り上げはもちろん、曜日、気温、降水量や近隣の行事、為替など様々な情報をもとに分析を行います。
AIのメリットは膨大なデータを蓄積でき、需要予測を行うほど精度が上がっていくことです。

人的ミスを防ぐことができる

需要予測を手動で行うためには、複雑な計算や大量のデータを扱うため人的ミスを避けることができません。需要予測システムを利用して、人的ミスを防ぎましょう。

デメリット

多くのデータが必要となる

せっかくの需要予測システムがあっても、データがなければ活用することができません。需要予測システムの能力をフル活用するためには多くのデータが必要となります。

よく売れる商品と取り扱いが少ない商品ではデータの量に差ができてしまいます。データ量が多いほど需要予測の結果は精度が上がるため、取り扱いが少ない商品には効果的な需要予測ができない場合があります。

またデータのフォーマットに揺らぎがあると需要予測システムは正しくデータを分析できません。データの入力者が違う、店舗とECシステムからの入力などフォーマットの揺らぎはなかなかなくすことができないため、対応を検討する必要があります。

予測が当たらない可能性もある

需要予測はあくまでも予測です。予測が当たらないことは避けられないことです。予測との誤差があることを踏まえて予測値に幅を持たせることが必要になります。

しかしそれでも予測が当たらない、幅の中に収まりきらないことがあります。
一度や二度で予測が当たらないとするのではなく、トライアンドエラーを繰り返し、適した予測方法、必要データを揃えるなど対策を明確にしていきましょう。

外的要因に左右される

需要予測システムでは大量のデータを取り扱うことができますが、データが不足すれば予測は外れます。それはデータ化できる要因以外に外的要因にも左右されます。

その時のトレンドや競合・近隣店舗の動向は需要に大きな影響を与え、海外の情勢で仕入れ値の変動や欠品など、環境は常に変わります。
現代のAIを用いた需要予測システムであっても、外的要因に対する予測は難しいものとなっています。

活用事例

実際に需要予測システムを活用している事例をご紹介します。
近年はAIの活躍が目覚ましく、大量画像やリアルタイム人口統計などビッグデータを取り入れ、これまで実現できなかった需要予測が可能になっています。

回転寿司

「どのメニューが注文されたのか」「どの食材がいつ廃棄されたのか」といったデータを収集し、その時の店内の状況と照合し、効率的な店舗経営へと繋げています。

AIを用いた需要予測システムでは1分後と15分後の必要なネタの種類と数を常に予測して、すぐに顧客の需要に答えられるようにしています。
長時間食べられることなくレーンを移動し続ける寿司は過去の話となり、廃棄率を75%削減することに成功しました。

タクシー

タクシーの乗車客を曜日、時間、天候、人口統計などデータを元に需要予測するサービスが提供されています。
現在から30分後までのタクシーの需要予測を10分おきに配信します。乗客の待ち時間を減らすだけでなく、不慣れな土地でも空車のまま走行するケースを減少させ、燃料ロスに繋げています。

ベテラン運転手にしか分からないような乗客の需要予測を新人運転手にも提供できることで、売上の平均化や新人運転手の働きやすさに繋がりました。

アパレル

アパレル・ファッション業界において需要予測は食料品や日用品のような生活必需品と比べ需要予測は難しく、需要予測システムが登場してからも難しい・効果がないとされていました。
しかしAIによるビッグデータの扱いが可能になり、大量の画像を解析することができるようになり、材質・デザイン・模様・カラー・シルエットなどの細かい分析が行われるようになりました。

世界的にSDGs・サスティナブルへの取り組みが盛んになり、「不必要に在庫を抱えない」というブランド理念を実現するための手段として需要予測が効果を発揮しています。適正な在庫量のおかげで値引きを抑制できた結果、利益が逆に上がったというケースがあります。

スーパーマーケット

生活必需品は需要予測がしやすい分野であるため、多くの企業で取り入れられています。過去の実績に加え天候やイベントなど様々な要素から需要予測を行います。

スーパーマーケットで需要予測を行う目的は主に2つです。

  • 食品ロス
  • 人手不足の解消

特に人手不足の解消に大きな効果があり、需要予測システムによる自動発注により発注業務の時間を大幅削減に成功、誤発注や発注忘れなどの人的ミスの防止に役立っています。

比較一覧7選

実際にサービス提供されている需要予測システムの機能などをご紹介します。

Prediction One(プレディクション ワン)

Prediction One(プレディクション ワン)
Prediction One(プレディクション ワン)
サービス会社ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
費用■トライアル
30日間無料
■スタンダード
年額217,800円
■アドバンス
年額1,320,000円
■エンタープライズ
お問い合わせ
デバイスクラウド
デスクトップ版
おすすめ業種製造、小売、飲食、コールセンター、不動産
URLhttps://predictionone.sony.biz/

Prediction Oneは専門家でなくても直感的に簡単に操作ができ、AIによるデータ分析をワンクリックで行うことができます。
算出された結果は予測理由がしっかりと提示されるため理解しやすく、自動モデリングで社内での提案にもすぐに活用できます。

AIでの予測のためにはデータの準備が欠かせません。そのために「データ準備機能」を合わせて提供しています。
https://predictionone.sony.biz/news/220511.html

導入実績例

  • 積水ハウス株式会社
  • タイガー魔法瓶株式会社
  • 株式会社ワークマン

dotData(ドットデータ)

dotData(ドットデータ)
dotData(ドットデータ)
サービス会社日本電気株式会社 (英文: NEC Corporation)
費用■dotData
お問い合わせ
■dotData Lite
月額350,000円~
■dotData Cloud
月額1,000,000円~
デバイス■dotData
お問い合わせ
■dotData Lite
クラウド(Microsoft Azure環境は別途用意)
■dotData Cloud
アマゾンウェブサービス(AWS)
おすすめ業種社会インフラ、製造、小売、金融、医療、サービスなどあらゆる業種に適用可能
URLhttps://jpn.nec.com/solution/dotdata/index.html

dotDataはAI・機械学習を扱うdotData, Inc.が開発し、日本国内ではNECが独占販売権を取得し提供しています。

データの前処理に数か月かかり、分析工数の8割を占めると言われていますが、dotDataはデータの前処理を自動化させ、たった数日でデータ分析にたどり着くことができます。

それでも自社では上手く需要予測ができない、そんな悩みに対応するべくNECでは「NEC データドリブンDXソリューション」としてサポートするサービスもあります。
https://jpn.nec.com/solution/dotdata/service/?banner

Forecast Pro

Forecast Pro
Forecast Pro
サービス会社株式会社日立ソリューションズ東日本
費用お問い合わせ
デバイスWindows、Windows Server
おすすめ業種グロサリー商品向け
スーパー、ホームセンター、ドラッグストア、雑貨、文具など
URLhttps://www.hitachi-solutions-east.co.jp/products/forecastpro/

予測手法は単一の方法ではあらゆるデータに適しているとは限りません。Forecast Proでは8つのモデルグループが用意されていて、最適なモデル選択とパラメーターチューニングを行います。
15,000品目の予測も1分程度で完了、パラメーター調整を行い予測を繰り返すことも簡単にできます。

テキスト、Excel、AccessなどのRDB(リレーショナルデータベース)からデータの読み込みが可能。在庫補充計画、生産計画、ERPなど多様なシステムと連携の実績があります。

導入実績例

  • HARIO株式会社
  • 株式会社アダストリア
  • オリンパス株式会社

SENSY Merchandising(MD)

SENSY Merchandising(MD)
SENSY Merchandising(MD)
サービス会社SENSY株式会社
費用お問い合わせ
デバイスお問い合わせ
おすすめ業種アパレル、百貨店、スーパーマーケット、食品など
URLhttps://sensy.ai/sensy-md-1

顧客一人ひとりの嗜好や購買タイミングなど感性をパーソナル人工知能に学習させ、高精度の需要予測を行います。
データ化しにくい情報を組み込んだ独自の方法で特にアパレル業界で特に注目を集めています。

顧客一人ひとりにパーソナライズ化したマーケティングを行う場合には「SENSY Marketing Brain (MB)」があります
https://sensy.ai/sensy-mb-1

導入実績例

  • 株式会社TSIホールディングス
  • 株式会社チュチュアンナ

EBILAB(エビラボ) TOUCH POINT BI(来客予測オプション)

EBILAB(エビラボ) TOUCH POINT BI(来客予測オプション)
EBILAB(エビラボ) TOUCH POINT BI(来客予測AIオプション)
サービス会社株式会社EBILAB
費用初期費用 44万円(税込)~
月額費用 1店舗32,560円(税込)~
デバイスお問い合わせ
おすすめ業種飲食など小売店特化
URLhttps://ebilab.jp/visitor-forecast/

EBILABが提供しているTOUCH POINT BIはPOSデータ分析など小売店経営に必要な情報を一元管理。顧客属性の把握、広告効果の測定、トレンド分析、顧客満足度調査などができます。
TOUCH POINT BIにオプションで来客予測オプションをつけることができ、来客予測から翌日の発注量やシフト作成など予測を元にして業務を行うことができます。

導入実績例

  • 三菱地所株式会社
  • 御素麺屋
  • 讃岐のおうどん花は咲く

AIsee(アイシー)

AIsee(アイシー)
AIsee(アイシー)
サービス会社コニカミノルタジャパン株式会社
費用月額費用 55,000円~
デバイスクラウド
おすすめ業種小売店など
URLhttps://businesssolution.konicaminolta.jp/business/solution/digitalmarketing/service/aisee/index.html

安価で販売、在庫、来場者数を予測でき、データを入力すればすぐに予測が可能です。
日頃なかなか売れないような商品は、売上が0を含む断続データとなってしまい、予測には不向きなデータです。しかしAIseeでは断続データも取り込むことができ、定番アイテム以外の様々な商品に対しても予測が可能です。

冠婚葬祭の業界では曜日より大安や仏滅などの六曜によって需要が変動するため、六曜でのサイクルにも対応しています。

Blue Yonder

Blue Yonder
Blue Yonder
サービス会社Blue Yonderジャパン株式会社
費用お問い合わせ
デバイスクラウド(Luminate上に構築)
おすすめ業種卸売、小売、ロジスティクス、商社など多くの業種に対応
URLhttps://blueyonder.com/jp/ja/solutions/demand-planning

創業35年を超える世界最大のサプライチェーン・ソフトウェア専門企業であるBlue Yonder(旧JDA Software)はグローバルに活躍中です。
AIによる機械学習では、需要に影響を及ぼす何百もの変数を取り込み、独自の需要予測を提供しています。在庫切れ、廃棄を減らし、在庫を減らしながらの予測精度の高さでサービスレベルの向上を行っています。

導入実績例

  • マヒンドラ&マヒンドラ(インド、自動車製造企業)
  • イオン(マレーシア)