店舗DX用語解説

店舗だけじゃない、博物館や美術館テーマパークが実践すべきキャパシティーコントロールとは?

コロナ禍の現代、あらゆる企業や施設などでは3密を避けるための方法が考えられています。

代表的な施策として大きなテーマパークや、大型店舗、動物園など様々な場所では入場制限が行われています。

今回は、博物館や美術館、テーマパークなどが行っているキャパシティーコントロールによる入場制限について説明します。

キャパシティーコントロールとは?

「キャパシティー」という英語は受け入れという意味です。

スポーツ観戦や映画館など席がある会場においては、受け入れられる総席数のような使われ方をします。

また博物館や美術館、テーマパークなどでは席があるわけではありませんが、一度に施設内に入場できる人数のことを「キャパシティー」としています。

「キャパシティーコントロール」とは、施設内にいる人数をコントロールすることです。

具体的には、入場者数と退場者数を管理し、施設内にいる人数を一定数以上にならないように入場規制や制限をかけながらコントロールします。

どうして必要なの?

キャパシティコントロールを行うということは、何もしないよりも手間がかかります。

なぜ手間をかけてまでキャパシティーコントロールを行う必要があるのでしょうか?

実際の入場者数を計測する

映画館ではコロナ以前からキャパシティーコントロールが行われてきました。

「入場制限とかされた覚えはないけど?」と思ってしまうかもしれませんが、昭和のころには入場チケットの販売のみで、チケット販売日の間はいつ入場しても退場しなければ同じ映画を何度見ても良いという方式をとっていました。

つまり映画館の客席が満席だったり埋まっていて立ち見になっている状態も多く、キャパシティーコントロールを行っていませんでした。

しかし、現代の映画館ではインターネットなどで事前に購入でき、その時に同時に座席指定を行います。それに加えて事前予約を行っていない場合でも、映画館のチケット販売機で座席指定を行ったチケットを購入してから入場します。

つまり全てのスクリーンで空席状況を把握し、席の重複や立ち見が発生しないようコントロールされています。

また映画以外にもコンサートや観劇などでも同様に前売り券を販売してキャパシティーコントロールが行われています。

キャパシティーコントロールを行うということは入場者数を計測できるということだけに留まりません。前売り券の売れ行き具合を見て、あまり売れていなければさらに広告を打ったり、当日券を販売したりして、マーケティングに利用することもできます。

感染リスク軽減のため

もちろんコロナ禍以降は、3密を避けて感染リスクを軽減させる目的で行われているものも多いです。

東京ディズニーランド・シーやUSJなど多くの人が一同に集まる場所では感染リスクを軽減させるために入場制限を行っているという報道を目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

近年新たにキャパシティーコントロールを取り入れる場合は、主な理由は感染リスク軽減目的の場合がほとんどでしょう。

どういう効果があるの?

キャパシティーコントロールを行うとどのような効果があるのか、4つご紹介します。

感染リスクの軽減

キャパシティーコントロールを行う上で期待する効果としては、感染リスクの軽減というケースが多いかと思います。

国立感染症研究所(NIID)では「百貨店・ショッピングセンター等大型商業施設の事業者、従業員、及び産業保健スタッフの皆さまへの提案(2021年8月12日時点)」として次のように提案しています。

「客が密となる場所においては人の流れや(時間当たりの)入場者数の調整をする。その際、売り場では、例えば混雑時・非混雑時のCO2濃度を参考に換気を工夫する」

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10579-covid19-18.html

感染リスクを軽減するためにキャパシティーコントロールを行うことは有効な手段であると言えるでしょう。

顧客満足度アップ

キャパシティーコントロールを行うことで混雑が発生しない、またはしにくい状況を作り出します。

混雑が発生していなければ、お客様は買い物や博物館での鑑賞などを快適に行うことができるということになります。

博物館や美術館での鑑賞はゆっくり落ち着いてそれぞれのペースで行いたいものです。

その環境を作り出せることになり、顧客満足度はアップすることでしょう。

従業員の人数の最適化

キャパシティーコントロールを行うと、施設内にいる最大人数を決定することができます。

業務を行う従業員の人数は必然的に決まってきますので、従業員の人数を最適化することができます。

アプリとの連携

混雑状況をアプリで確認できれば「こっちは混んでいるからあっちに行こう」というようにお客様が選択できるようになるでしょう。

2020年10月30日から11月1日の3日間に「横浜スタジアム技術実証」が行われました。

ここでは「LINE Beacon」を活用してトイレや売店での混雑状況を把握できるシステムの実験が行われたようです。

しかしアプリのインストールとBluetoothをオンにする必要があったため、結果としてはあまり効果は芳しくなかったようですが、今後開発や環境が整ってくると実用化される可能性があります。

また、これまでもディズニーランド・シーでは「ファストパス」が混雑緩和や人数のコントロールに活用されています。

今後技術の発展に伴い、さらに使用されるケースが増えてくるでしょう。

対策すべき業種や業界

特にキャパシティーコントロールを行った方が良い業種や業界をご紹介します。

コンサート会場

チケットの販売など、キャパシティーコントロールをすでに行っている環境ではあります。具体的には座席に応じた規制入場・規制退場を行っていますが、それだけだと混雑は避けられません。また誘導スタッフも規模が大きくなればなるほど必要になります。

コントロールをすでに行っている環境ではあります。具体的には座席に応じた規制入場・規制退場を行っていますが、それだけだと混雑は避けられません。また誘導スタッフも規模が大きくなればなるほど必要になります。

スタッフの感染リスク軽減のためにも、入退場ではシステムによるキャパシティーコントロールを導入して感染リスクの軽減に務めた方が良いでしょう。

美術館、博物館

美術館や博物館など鑑賞する施設では個人のペースでゆっくり鑑賞したいものです。会場内で適度な空間が確保できるように入退場でキャパシティーコントロールを行い、会場内にいる人数の上限を定めた方が良いでしょう。

コントロールを行い、会場内にいる人数の上限を定めた方が良いでしょう。

また、人気の展示物には人だかりができるケースもあります。

そのような場合にも、密を避けられるよう部分的にキャパシティーコントロールを行う方法もあります。コントロールしたい空間内で人の流れが一定でなかったり、長時間の滞在が予想される場合などは人数や人の流れのコントロールが難しくなります。

飲食店

飲食店は昼や夜など混雑時には店の入口付近に待ちの行列ができてしまいます。お客様は少しでも早く食事をしたいと列を詰め気味になりがちで、密な状況ができてしまいます。

しかし従業員もオーダーを受けたり、配膳や片付けなどで大忙しで、お客様の行列を管理している時間はなかなか取れないでしょう。

近年では待ち行列のできやすかった回転寿司チェーンなどで事前予約システムや、入店管理システムを導入してキャパシティーコントロールを行う店舗が増えています。

飲食業は従業員の感染リスク軽減のためにも、キャパシティーコントロールを導入することが望ましい業種になります。

会場から交通機関までの間

イベントなどの終了後、帰路に就く人で会場の近隣が一斉に人で溢れることは想像しやすいと思います。コンサートなどでは規制退場を行うこともできますが、入退場自由なイベントなどでは規制退場を行うこともできません。

2001年には明石花火大会歩道橋事故という悲惨な事故が起きました。

花火大会の会場へ行く人と会場から帰る人が、歩道橋という狭い場所ですれ違うことができない状況になってしまったことから起きた事故です。

イベント会場では密にならないような対策がしっかり取られていたとしても、会場を出てから交通機関へ移動するまでに密が発生しては意味がありません。

明石花火大会歩道橋事故でも歩道橋上での帰宅ラッシュ移動の予測や対策が甘かったことが原因でした。

歩道橋で人の流れが滞るような狭い場所には特にキャパシティーコントロールを行う必要があるでしょう。

まとめ

キャパシティーコントロールは店舗だけではなくコンサートやイベント、博物館や美術館の他にも多くの業種で取り入れるべきシステムです。

なぜならお客様の感染リスク軽減のみならず、従業員の感染リスク軽減や、顧客満足度アップなどの効果も見込めます。

ぜひキャパシティーコントロールを支援するシステムの導入を一度ご検討してみてはいかがでしょうか。