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給与計算とは?基礎知識と正しく効率的に行う方法【徹底解説】

給与計算の基礎知識

従業員を雇用している会社であれば給与計算は必ず発生する業務です。そして、給与の計算は従業員の生活に直結するため絶対にミスの許されない業務でもあります。
給与計算に必要な基本給や各種手当、税金や保険料の他に、給与計算を行う際の注意点をご紹介します。

給与計算に必要な基礎知識はこれだ!

給与計算は複雑で計算方法が分からないと困っている人もいることでしょう。
ここから給与計算に必要な基礎知識を順に解説していきます。

給与計算とは

前提として従業員の労働の対価として会社は給与を支払う必要があります。
給与計算には「労働契約の履行」や「税金や保険など公的手続きの履行」といった意味合いがあり、会社は自社の従業員に対して期日までに給与を正確に支払う必要があります。

基礎知識

給与の計算方法は次の通りです。

総支給額 - 控除額 = 差引支給額(手取り額)

総支給額会社が従業員に支払うすべての金額

・基本給 + 各種手当(残業手当、休日出勤手当など)
控除額差し引かれる金額

・税金(所得税、住民税)
・保険料(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)
会社によって親睦会費など特別な項目を設けていることもあります
差引支給額
(手取り額)
従業員の銀行口座に振り込まれる金額

つまり、給与計算をする際には「総支給額」「控除額」「差引支給額」の3つの金額を計算する必要があります。

給与計算の定石

会社は従業員に対して、給与を毎月1回以上支払うことが義務付けられているため、毎月給与計算を行う必要があります。
ここからは会社と従業員が結んだ労働契約や就業規則により計算が変わるため、給与の一般的な計算を掲載しています。

基本給

基本給は勤務形態に応じた計算を行います。

月給制労働契約に応じた固定給
時給・日給制労働時間 × 時給・日給
年俸制年俸 ÷ 12か月
時短勤務月給から時短された時間分の割合をカットなど
例:8時間勤務から6時間勤務の場合、月給25%カット
フレックスタイム制清算期間3か月の場合、法定労働時間の3か月分合計を不足していないか確認します。
不足した場合は基本給からカットします。

各種手当

各種手当にあたる残業手当や休日出勤手当は基礎賃金を割増計算することになります。
割増計算をするためには、月給から基礎賃金を割り出します。

基礎賃金 = 月給 ÷ (所定労働時間×1か月の勤務日数)

基礎賃金から残業手当の割増金額の計算をします。

法廷時間外労働基礎賃金+25%
月60時間以上の法廷時間外労働基礎賃金+50%
深夜労働基礎賃金+25%
休日労働基礎賃金+35%

さらに他の手当を加えます。次の手当は一例です。

  • 役職手当・管理職手当
  • 通勤手当
  • 資格手当
  • 家族手当(扶養手当)
  • 欠勤控除(遅刻・欠勤の場合差し引くのが一般的)

基本給に各種手当を加えて総支給額を求めます。

総支給額 = 基本給 + 残業手当 + その他の各種手当

各種税金、保険料

税金や保険料は手動で計算を行う場合に最も間違えやすい箇所になります。注意しながら計算しましょう。

所得税国税庁が公表している源泉徴収税額表に当てはめて、毎月天引きします

令和4年分 源泉徴収税額表
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2021/02.htm

おおよその金額になるため、年末調整で正確な所得税額を計算し、差額を清算します
住民税毎年5月31日までに従業員が居住する自治体から「住民税の決定通知」が届きます
記載されている「住民税特別徴収額」を天引きします
健康保険料
厚生年金保険料
日本年金機構より届く「社会保険料の納入通知書」の金額を毎月天引きします
40歳以上になると介護保険の被保険者になりますが、健康保険料と合わせて計算されます
雇用保険料雇用保険料 = 総支給額 × 雇用保険料率

雇用保険料率は厚生労働省より公表されます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html

その他の控除金

会社の独自項目がある場合は控除に加えます。

  • 財形貯蓄
  • 労働組合費
  • 社宅費
  • 親睦会費 など

差引支給額の計算

総支給額から差引金額を引いた金額が差引支給額となります。

差引支給額 = 総支給額 ー 差引金額

総支給額 = 基本給 + 残業手当 + その他の各種手当
差引金額 = 各種税金・保険料、その他控除金の合計

差引支給額を毎月給与として振込、給与明細を発行します。

給与計算をするときの注意点

給与計算はミスの許されない計算です。
注意点を常に意識して、問題が起こらないよう心がけましょう。

時間

給与は毎月決められた日に必ず振り込むことが求められるため、遅れは許されません。

しかし、給与計算を手動で行う場合にはかなりの時間がかかってしまいます。給与計算の担当者は多くの場合、給与計算以外に他の経理業務などを担当しています。業務の兼ね合いを考え、余裕をもって給与計算に取り組みましょう。

計算

従業員の生活に直結しているため、計算ミスも許されません。

計算ミスがあった場合には再計算を行い差額を当月もしくは翌月に清算を行いますが、従業員の同意が必要になります。
不足している場合には遅延損害金を支払う必要がある場合もあり、処理が複雑になるだけでなく、信頼関係を損なってしまいかねません。

計算ミスを起こしてしまわないよう、対策を講じておきましょう。

よくある計算ミスとその対策

保険料率の改定毎年改定が行われる時期が決まっているため、年間スケジュールを立てましょう。
3月:健康保険料
4月:雇用保険料
6月:住民税
9月:厚生年金保険料
扶養人数の変更など
従業員の生活環境変化
複数人で確認できるようチェック体制を整えましょう。
人事異動など
従業員の社内環境変化
役職手当や昇給による基本給の変更などがあります。
従業員の申請漏れ、受けた申請の反映漏れがないよう手順のマニュアルを作成しましょう。

情報

給与計算には従業員の個人情報を多く取り扱うことになります。
業務上知りえた情報を業務以外で口外することは絶対にしてはいけません。

また、情報漏洩を起こさせない環境づくりも重要です。
個人情報を含む書類管理のための社内ルールづくり、紛失や関係ない人の閲覧したりすることのないような環境を整えましょう。

電子化されている情報も多くあるため、IT部門と連携をとり、アクセス権の設定や認証、ウイルス対策など各種のセキュリティ対策を講じましょう。

まとめ

給与は会社と従業員を結ぶ信頼関係につながります。

給与計算の基礎知識をしっかりと確認し、細心の注意を払い、正確な給与計算を心がけましょう。